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歯ぐきに炎症があるかどうかを見分けるサイン

 歯周病にしろ、智歯周囲炎(親知らずの周囲に起こる炎症) にしろ、歯ぐきに炎症があるかないかを確実に見分けるには、歯科医院で専門家によるお口の検査を受ける必要があります。使われるのはプローブという器具です。歯ぐきを傷つけないように先が丸く作られた針のような器具で、歯と歯ぐきの間にある溝の深さを測る際に用います。このとき歯科衛生士や歯科医師は、深さだけでなく、約25g重という弱い力で刺激したときに歯ぐきから出血があるかどうかも確認しています。

 これは非常に重要な検査項目です。溝の深さを測っているときに出血があれば、現在その部分の歯ぐきに炎症があることが分かります。反対に、溝の深さが病的に深くても、測定時に出血がなければ、過去には炎症があったかもしれませんが、現在は落ち着いている状態とみなされます。つまり、深さという「過去からの結果」と、出血という「現在の活動性」の両方を見ることで、歯ぐきの状態を正しく判断しているのです。

 自宅でも、弱い力で歯磨きをしただけで歯ぐきから出血がある場合は要注意です。歯ぐきが健康であれば、通常のやさしいブラッシングで出血することはほとんどありません。また、歯ぐきの炎症は特に磨き残しのありがちな歯と歯の間で起きやすいことが知られています。そのため、歯間ブラシやフロスをそこに通したときに血がついていた場合も、要注意のサインです。ただし、これらの器具は力加減が難しい点に注意が必要です。炎症がなくても力が強すぎれば歯ぐきを傷つけて出血させてしまうことがありますし、逆に炎症があっても力が弱すぎて出血が見られないこともあります。自己判断では、「出血=炎症」「出血なし=健康」と単純に決められないのです。

 ここで、少し面白い話を紹介します。10年ほど前、歯周病をご家庭でチェックするための専用のリンゴが販売されたことがありました。リンゴに貼られたQRコードをスマートフォンで読み取って専用アプリをダウンロードし、案内に従ってリンゴをかじり、歯や歯ぐきの状態を入力します。その情報が連携する歯科医院に送られ、1日以内に歯周病やむし歯、顎関節症などの健康リスクを判定した診断が届くという仕組みでした。リンゴは診断後もおいしく食べられ、価格は1個300円(税込)。リンゴの消費拡大を狙い、付加価値をつけたいという発想から生まれた商品でした。

 このアイデアは、さらに前の世代にとっては、かつてテレビCMで流行した「リンゴをかじると歯ぐきから血が出ませんか?」という、歯周病の症状を問いかけるフレーズを連想させるものでもあります。診断の精度についての専門的見解は控えますが、確かにリンゴをかじった程度で明らかな出血があるなら、重度の歯周病に罹っている可能性が疑われるでしょう。

 強調したいのは、こういった自宅でのチェックはあくまで目安にとどめ、必ず歯科医院で専門家による測定を受けていただきたいということです。定期的な検診を受けて、自分の歯ぐきの状態、特に歯と歯ぐきの溝の測定時の出血の有無を確認しておくと、歯ぐきの今の状態を客観的に知ることができます。さらに継続した検査結果から、ホームケアが適切かどうかも判断できます。


画像説明

リンゴの木。スウェーデンのリンゴ博物館にて。


参考文献



筆者プロフィール

Makiko NISHI

西 真紀子
NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長
(旧称 「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」)

1996年 大阪大学歯学部卒業
     大阪大学歯学部歯科保存学講座入局
2000年 スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員
2001年 山形県酒田市 日吉歯科診療所勤務
2007年 アイルランド国立コーク大学大学院修士課程修了
Master of Dental Public Health (MDPH)取得
2010年 NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長
(旧称 「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」)
2018年 同大学院博士課程修了 
   Doctor of Philosophy(PhD)取得

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