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遠藤純聡先生:上尾ホワイト歯科

口腔の健康を見ずして、全身の健康を守ることはできない

従来の診療スタイルに対する疑問について

歯科医師を目指そうと思ったきっかけ・動機について教えていただけますか。

父が内科医として開業しており日頃から医療現場を身近に感じていました。その様な環境で育ちましたので、私自身も自然と医療従事者を志し、歯科医師という道を選んでいました。

歯科大学に入学してから現在に至るまでの経緯・学びについてお聞かせください。

北海道医療大学の学生生活は部活(スキー部)に打ち込み学業はおろそかになってしまいました…しかし大学卒業後は少子高齢化社会の到来を見据えて、東京医科歯科大学の高齢者歯科に入局し、高齢者の全身管理と残存歯が少ない状況への治療方法を学び実践を繰り返していました。
そして新卒となり新たな技術の習得や知識を身に着けることが単純に楽しく、日々腕を磨いてきました。元々開業志向が強かったため、その後は一般歯科診療所で大学病院とは違う患者対応、医業利益を意識した治療などを学びました。

一般的に削って詰めるといった「むし歯治療」から「予防歯科」に力を入れようと思ったきっかけや出来事等はあったのでしょうか。

一般的な歯科診療所で毎日むし歯治療を行っていると、治療をしてもすぐにむし歯が再発してしまう患者さんに出会うようになりました。治療をしても治療をしてもむし歯が繰り返しできる状況に遭遇すると、当たり前に行ってきた日常臨床に疑念が湧いてきました。「なぜ治療をしてもすぐにむし歯ができてしまうのか?」「磨き残しが多い状況で治療をして意味があるのだろうか?」「このままで患者さんは幸せなのだろうか?」治療を繰り返す毎に自分の行っている仕事に徒労感を感じ予防歯科を意識するようになりました。

真の患者利益とはむし歯や歯周病の“原因”を突き止め再発を防止すること

理想の予防歯科を求めて

なぜ日吉歯科診療所(山形県酒田市)のオーラルフィジシャン育成セミナー(2013年30期)を受講されたのでしょうか。(2019年12月現在 65期)

先述の通り、日々の臨床に疑問を感じ単発の予防セミナーを受講したり、思いつきの予防プログラムを作成したりしていましたが、長続きせず院内に落とし込むことができませんでした。そこで何か医院にプラスになる事があればと思い軽い気持ちでOPセミナーを受講しました。実際に受講してみると今まで行ってきたことが小手先の予防であり医院理念が無いことに気付かされました。その後は必至でセミナーで教わったことを実践してきました。

貴院が診療を行う上で軸にしているMTM(メディカルトリートメントモデル)と世間一般的な診療との違いは何でしょうか。

疾患の原因に対処しているかどうかだと思います。自分自身の経験からですがOPセミナーを受講する前はむし歯や歯周病が発症してもなぜ病気ができたのかという考えがなかったように思います。
一方、MTMの流れでは必ずむし歯や歯周病の原因は何だ?と考えるプロセスが組み込まれているので自然と医療者も疾患の原因について考え、原因を突き止めたら病気にならないような対策を施すことになります。
そのため、自然と患者さんはむし歯や歯周病の再発が抑えられ歯科医院への通院回数、医療費、治療時に受ける精神的苦痛を最小限に抑えることができます。これは大きな患者利益ではないでしょうか。

オーダーメイドによる予防プログラムの立案で患者さんに寄りそった治療を実現

予防歯科の実践について

KEEP28を達成するためには予防歯科が非常に重要です。
目標達成のために患者さんのライフステージ(年齢・職業)に合わせてどのようなことを実践されていますか。

患者さんとの信頼関係が培われてきましたら、職業、学校の専攻、趣味等をお聞きしています。例えばお菓子職人の方であれば日常業務で味見をし常に食事をしている状態になります。そのような方に「食事をしたら歯を磨きましょう」という指導は全く無意味です。業務が終わったら一度歯磨きをしてリセットしましょう等、職業にあった指導を行います。
年齢別の指導については3歳までは主に保護者への指導、むし歯菌の感染防止を主な目標にしています。就学までは歯磨きの習慣をお子様自身に付けてもらい、むし歯なしの乳歯列期を目指します。また小学生はメインテナンスを髪を切りに行くのと同じくらい当たり前の事として定着させ、その後の中学生、高校生は親から自立し自分で口腔の管理を行える様に導きます。やはり食生活や生活習慣の乱れが原因のむし歯を極力抑え、少ない回数でもメインテナンスに来院してもらい、むし歯のない永久歯列を目指します。
社会人は新たなむし歯の発症は減りますが歯周病の問題が起きてきます。学生時代にメインテナンスに通う習慣のなかった人はなるべく早くメインテナンス通院を促します。そして高齢期は歯を失い始める方も増えてきますので、歯を失われるのが加速しないよう噛み合わせのコントロール、入れ歯の処方を行います。当然メインテナンスが前提となります。

貴院が所在する埼玉県上尾市の患者傾向の特徴を教えてください。 また開院した当初(2009年)と現在の患者さんの口腔内の状況や診療二―ズに変化はございますか。

ホワイト歯科という名称と駅前という事もあり当初はビジネスパーソンが多く来院されました。その後、予防型の歯科医院に変更してからはお子様とその保護者の方にご利用いただける様になり、親子で予防歯科を受けていただく患者様が増えました。初回来院時はむし歯や歯周病の痛みを訴える方も多いですが、その後はスムーズに予防の流れに移行していただいております。

患者教育について

患者さんが予防歯科の重要性を理解し継続的にメインテナンスに通っていただくためにどのような取り組みや工夫をされていますか。

口腔の健康が全身の健康に関連していることをメインテナンス毎に伝え、単なるお口のクリーニングに来院されているのではなく、全身の健康を守るために来院されているという意識を持っていただくようにしています。当院では新たに学んだ健康に関わる情報をお伝えし、新鮮な情報をお届けしながらモチベーションの維持を図っています。

歯科も全身の健康との兼ね合いを要求される時代になりましたが、基礎疾患(高血圧症・高脂血症・糖尿病等)を抱えている患者さんに対する診診連携について教えてください。

当院は有病者の方はそこまで多くないのですが、まずは初診時の詳細な問診、服薬状況の確認から行います。そこで病状がはっきりしない場合はかかりつけ医への対診を行い医療連携を図っています。当然、歯科医院としてできることは全身疾患に影響する歯周病の進行抑制です。その上でメインテナンス時に運動指導、食事の改善指導などをアドバイスしています。

採用・教育・マネジメントについて

現在、歯科界では歯科衛生士の採用に多くの医院が苦労されています。
なかでもオーラルフィジシャン歯科医院では、患者担当制や日常的な学習等により敬遠される傾向が少なくありません。その様な状況で歯科衛生士の採用・教育・マネジメント面で大切にしていることは何でしょうか。

OP(オーラルフィジシャン)医院はやる気のある歯科衛生士にとってモチベーションを保ちながら成長していける貴重な医院だと思っています。1番に「口腔の健康を守ることから全身の健康を守る」という理念を伝えOP医院としてのやりがいを伝えています。
口腔内写真撮影、X線写真の位置付け、リスク評価に基づいたオーダーメイドの予防プログラムの立案など最初の業務を覚えるのは大変ですが、そのスキルを習得する事により、より患者さんに寄り添った指導が可能となります。
新卒、既卒にかかわらず一から丁寧に学べるよう教育プログラムを組んでいます。

デジタルデータでの情報提供は当院の質を担保とすることで成立する

診療データの情報提供について

クラウドサービスを利用して診療情報を患者さんと共有することについて、患者さんの反応、スタッフの労力、その効果などを教えてください。

クラウドサービスの導入にあたり大きな労力は必要ありませんでした。患者さんからはご自身のお口の状態がいつでも確認できると非常に好評です。遠方に単身赴任された場合、その地域で歯科受診が必要な際にクラウドデータを初診の医院で見せることで治療が円滑に行えるなど、様々な場面で活用できております。

予防歯科をさらに社会に普及させるためには、どのような取り組みが必要になるとお考えでしょうか?

予防の取り組みを行なっている人の医療費を下げる、逆に一切予防的な行動を取らない人は医療費が高くなる、など制度として予防しやすい環境を国家として整えていけると良いと思います。国も予防医療を重視しているので期待したいです。当然、地域の歯科医院が来院する患者さんへ口腔健康の価値を伝える事は必要不可欠です。

最後に貴院の今後の展望・展開について教えてください。

ハード面では院内が手狭になってきたため、しっかりとした診療スペースを確保し、ゆとりのある環境で医療を提供したいと思っています。
日本は社会保障費の増大や超高齢社会の到来により、健康で長く働ける人々を必要としています。人生100年時代を社会の支えられる側ではなく支え手であり続けられる様に、健康でいる事は権利ではなく義務ではないでしょうか。今後この時代を健康で生き抜くためには、身体の一部である口腔健康が必要不可欠です。すなわち地域の皆様が健康でいられる様に、患者さんと歯科医院が協力し口腔健康を守る事が、地域及び日本の発展につながると信じています。
少し大袈裟ですが、「日本を救う」そんな歯科医院に発展していきたいと思います。

先生による自己評価(5点満点)