果物ジュースも、さようなら
以前、「スイーツよ、さようなら」 という記事を書きました。本コラムでは、スイーツだけでなく、さらにジュースにもお別れの言葉を投げかけたいと思います。
世界保健機関(WHO)の「糖類摂取ガイドライン」では、フリーシュガー(遊離糖類)の摂取量を1日あたり25g未満(大さじ3杯弱、総エネルギー2,000カロリーの場合)に抑えることが推奨されています。このフリーシュガーには、砂糖や蜂蜜だけでなく、「果汁、濃縮果汁中に天然に存在している糖類」も含まれます。つまり、100%果汁のジュースであっても、フリーシュガーとしてこの数値目標にしっかりカウントされてしまうのです。
では、実際に100%果汁のジュースで、どのくらいの量を摂るとこのガイドラインの目安を超えてしまうのでしょうか。市販の100%オレンジジュースやりんごジュースには、コップ1杯(200ml)あたりおよそ20g前後の糖類が含まれています。ということは、コップ2杯(400ml)飲むだけで、1日の上限とされる25gを軽々と超えてしまう計算になります。健康に良さそうなイメージで飲んでいる方も多い果物のジュースが、実はスイーツ顔負けの「曲者(くせもの)」になっているのです。
ご家庭で、生の果物からジューサーを使ってジュースを作られたことはあるでしょうか? その際に廃棄物として残った薄皮や果肉の繊維くずの山! 実際に自分の手で作ってみると、「これだけの果肉と繊維を、コップ1杯のために捨てているのか」という事実に驚かれるでしょう。市販のジュースを買う時には見えてこない現実です。実はあの繊維くず(食物繊維)がとても重要なのです。
生の果物を丸ごと食べる時には、果肉に含まれる食物繊維が糖の消化・吸収をゆるやかにしてくれます。ところが、この食物繊維の大部分が取り除かれたジュースの場合は、糖分だけがダイレクトに、しかも素早く体内に吸収されてしまいます。その結果として起こるのが、血糖値の急上昇、いわゆる「血糖値スパイク」です。さらに、液体の状態で大量の果糖が一気に体に入ってくると、小腸で処理しきれなかった分がそのまま肝臓へと流れ込み、中性脂肪として蓄積されやすくなることも分かっています。
お口の中で起きていることも見過ごせません。以前、「水は最高の飲み物」 という記事でお伝えした通り、糖類の入った飲み物をチョビチョビと繰り返し口にすることは、歯の周りを酸性に保ち続け、むし歯のリスクを高めます。さらに果汁ジュースは、それ自体が酸性度の高い飲み物でもあるため、歯の表面が広範囲に溶けてしまう「酸蝕症」という状態を招く可能性もあります。糖類の面でも、酸の面でも、ジュースを日常的にゴクゴクと飲む習慣には注意が必要なのです。
これからは、果物は搾らずにそのまま、オレンジならオレンジそのものを、りんごならりんごそのものを。喉が渇いた時には、水を代表とする甘くない飲み物を選んでください。
画像説明
健康的に見えるオレンジジュースですが、コップ2杯飲むと、フリーシュガー(遊離糖類)の目安を超えてしまいます。
参考文献
- World Health Organisation. Guideline: sugars intake for adults and children. Available from: https://www.who.int/publications/i/item/9789241549028
- 文部科学省. 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 果実類・果実飲料類.
- Dreher, M. L. (2018). Whole fruits and fruit fiber emerging health effects. Nutrients, 10(12), 1833.
- Jang C, Hui S, Lu W, Cowan AJ, Morscher RJ, Lee G, Liu W, Tesz GJ, Birnbaum MJ, Rabinowitz JD. The Small Intestine Converts Dietary Fructose into Glucose and Organic Acids. Cell Metab. 2018 Feb 6;27(2):351-361.e3.
筆者プロフィール
Makiko NISHI
西 真紀子
NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長
(旧称 「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」)
| 1996年 | 大阪大学歯学部卒業 |
| 大阪大学歯学部歯科保存学講座入局 | |
| 2000年 | スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員 |
| 2001年 | 山形県酒田市 日吉歯科診療所勤務 |
| 2007年 | アイルランド国立コーク大学大学院修士課程修了 |
| Master of Dental Public Health (MDPH)取得 | |
| 2010年 | NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長 |
| (旧称 「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」) | |
| 2018年 | 同大学院博士課程修了 |
| Doctor of Philosophy(PhD)取得 |
