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知覚過敏かなと思ったら

 知覚過敏は、冷たい飲み物や風に触れただけで「キーン」とした鋭い痛みが走るため、日常生活の質を下げやすい症状です。原因としては、歯ぐきが下がったり、エナメル質が摩耗したりすると象牙質が表に出て、外からの刺激が神経に伝わりやすくなることが挙げられます。初期の軽度であれば、ホームケアによって症状の緩和が期待できます。ここではフッ化物入りの歯磨き剤を活用した簡便な方法を紹介しましょう。

 フッ化物はむし歯予防によく効きますが、知覚過敏に対しても有効性が確認されています。フッ化物により歯の表面が再石灰化し、知覚過敏用歯磨き剤に含まれる成分が象牙細管と呼ばれる微細な管を塞ぐことで、神経への刺激の伝達を弱めて知覚過敏の症状軽減に寄与するとされています。

 ホームケアとしては、まずフッ化物が1,450ppm配合された市販の歯磨き剤を試してみましょう。知覚過敏用歯磨き剤を選ぶ場合も、フッ化物が配合されていることを確認してください。

  1. 通常の歯磨きをした後、石けんで手を十分に洗い、清潔な状態にします。
  2. そして、その歯磨き剤を指に豆粒サイズほど取り、冷たい刺激でしみやすい歯面(特に歯の根元付近)に、指先でやさしく押し当てるように塗ります。ちょうど軟膏を皮膚に塗るように、歯の表面に膜を作るようなイメージで、約60秒間薄く伸ばしてください。
  3. その後、できるだけ飲食やうがいを控え、成分をとどめます。
  4. 1日2回程度行ってください。

 最近の研究では、ハイドロキシアパタイト入り歯磨き剤も知覚過敏に効くという結果が出ていますので、試してみてもいいかもしれません。しかし、研究の蓄積という点では、フッ化物入り歯磨き剤の方が豊富です。また、多くの場合は価格も比較的手頃です。

 知覚過敏は、強すぎるブラッシングによって悪化することがあります。特に硬い歯ブラシで力を入れて磨く習慣がある人は注意が必要です。歯磨き剤を塗り込む際も、強くこする必要はありません。歯の表面に薬を置くようなイメージで優しくなじませるだけで十分です。

 なお、知覚過敏の症状は日によって強くなったり弱くなったりすることがあります。数日で大きな変化がみられなくても、すぐにあきらめる必要はありません。一方で、2週間ほど適切なケアを続けても改善しない場合や、症状が悪化する場合には、知覚過敏以外の原因が隠れている可能性もあるため、歯科医院を受診してください。

 歯科医院では、まずフッ化物バーニッシュ などの薬剤を用いた処置が行われます。これは知覚過敏に対して保険適用になります。副作用が少なく、安全性が高い治療法です。それでも効かないような重症の場合は、歯の表面に液状の樹脂をコーティングし、象牙細管を封鎖します。それでも無理な場合は固形の樹脂をしっかり接着させます。樹脂による治療は効果が高い一方で、天然歯を人工材料で覆う処置になるため、通常は保存的な方法で改善しない場合に検討されます。

 また、知覚過敏があるからといって歯磨きを避けてしまうのは逆効果です。しみるのが嫌で磨く回数や時間が減ると、むし歯や歯周病のリスクが高まります。特に歯ぐきが下がって露出した歯の根の部分は、エナメル質に覆われた部分よりもむし歯になりやすいことが知られています。知覚過敏のケアとむし歯予防を同時に行うためにも、フッ化物入り歯磨き剤を使った丁寧な清掃を続けることが大切です。


写真説明

清潔な指にフッ化物入り歯磨き剤を置いてしみる部分に塗り付けます。


参考文献


  • Creeth J, Maclure R, Seong J, Gomez-Pereira P, Budhawant C, Sufi F, Holt J, Chapman N, West N. Three randomized studies of dentine hypersensitivity reduction after short-term SnF2 toothpaste use. J Clin Periodontol. 2019 Nov;46(11):1105-1115.

  • West NX, Seong J, Davies M. Management of dentine hypersensitivity: efficacy of professionally and self-administered agents. J Clin Periodontol. 2015 Apr;42 Suppl 16:S256-302.

  • Vano M, Derchi G, Barone A, Pinna R, Usai P, Covani U. Reducing dentine hypersensitivity with nano-hydroxyapatite toothpaste: a double-blind randomized controlled trial. Clin Oral Investig. 2018 Jan;22(1):313-320.


筆者プロフィール

Makiko NISHI

西 真紀子
NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長
(旧称 「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」)

1996年 大阪大学歯学部卒業
     大阪大学歯学部歯科保存学講座入局
2000年 スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員
2001年 山形県酒田市 日吉歯科診療所勤務
2007年 アイルランド国立コーク大学大学院修士課程修了
Master of Dental Public Health (MDPH)取得
2010年 NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長
(旧称 「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」)
2018年 同大学院博士課程修了 
   Doctor of Philosophy(PhD)取得

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