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メインテナンスを受けよう

「歯科検診」だけでは歯と口の健康は守れない

歯科治療終了後も生涯健康な歯と口の環境を維持するためには、むし歯と歯周病のどちらもバイオフィルム感染症のため、歯科医院で定期的にバイオフィルム(下図参照)の除去とリスクアセスメント(各種検査・撮影など)を行うことが必要です。むし歯は削って詰めれば終わりではありません。その部分は日常的にむし歯になりやすい環境のため、治療後に以前と同じホームケアでは、むし歯が再発する可能性が高いのです。また、歯周病は治療により治癒または病状が安定していても再発しやすい病気です。むし歯も歯周病も、再発を防ぎ健康な状態を維持するためには、定期的に歯科医院で検査をして、歯科衛生士によるメインテナンスを受け、ホームケアの不備を教えてもらうことが大切です。

患者さんの中には、「歯科検診」と「メインテナンス」を混同している方がいますが、「歯科検診」は病気を早期に発見して早期に治療することを目的とした検査です。一方「メインテナンス」は、健康な歯と口の状態を維持するための健康管理です。その内容は、1つには悪くなっていないか、あるいは悪くなるようなことが起こっていないかを問診や検査によって歯と口の状態を確認することです。もう1つの目的は、健康な状態を長期的に維持するために、歯科衛生士によるプロフェッショナルケアとホームケアへのアドバイスです。

定期メインテナンスによる健康な状態を維持する概念図

概念図の線は、定期的なメインテナンスを受けることで歯と口の健康が継続的に健康な状態を維持できることを示しています。メインテナンスを受診するにあたり大切なことは、メインテナンスを受ける間隔(=定期的)です。
メインテナンスの間隔は、初診時の疾患の程度、治療後の歯周組織やホームケアの状態、全身疾患の有無などをもとに決めます。患者さん個々の状態で変わってきますが、一般的には約3ヶ月ごとのメインテナンスが効果的とされています。

このようなことから「歯科検診」だけでは歯と口の健康は維持できないことが理解できます。すでにこのことは、スウェーデンの公立歯科医院のアクセルソン博士の研究論文と山形県酒田市の日吉歯科診療所のデータからも明らかにされています。下記の表を見ていただければ、「メインテナンス」の大切さと従来の歯科医院へのかかり方では、歯と口の健康は守ることができないことを理解いただけると思います。

バイオフィルムとは…
細菌のかたまりで、むし歯と歯周病の原因です。
うがいをしたり、軽く磨く程度では取り除くことは難しく、きちんと除去するためには歯科医師や歯科衛生士による器械的な除去が最も効果があるとされています。

一人あたり平均齲蝕発生歯面数(6年間)

初発カリエスと二次カリエスの合計

下の表からは、35歳以下の方が6年間定期的にメインテナンスを受診するとむし歯になる箇所は0.2本ですが、メインテナンスを受診していない方は14.9本にむし歯が発生していることがわかります。

年齢群 メインテナンス群 非メインテナンス群
35歳以下 0.2 14.9(74.5倍)
36~50歳 0.2 15.1(75.5倍)
51歳以上 0.3 11.9(39.7倍)

メインテナンス患者の平均喪失歯数

日吉歯科診療所のデータ表からは、初診時に来院した年齢が20~34歳の方は、メインテナンス継続来院年数最大10年で0.1本、最大30年で0.3本の歯しか失われてないことがわかります。ですから34歳で来院した方が定期的にメインテナンスを受診していれは64歳になった時も0.3本しか歯を失わないことになります。定期的にメインテナンスを受診している方は、未来の自分の歯と口の健康状態を知ることができるのです。

日吉歯科診療所

20~34歳 35~44歳 45~54歳 55歳~
~10年(2967人) 0.1 0.1 0.2 0.3
11~15年(767人 0.2 0.2 0.8 1.1
16~20年(370人) 0.4 0.6 1.2 0.9
21~30年(344人) 0.3 1.0 1.3 1.8
  • 初診時年齢
  • 継続来院年数
  • 単位:本

出典)日吉歯科2008年12月のデータより

アクセルソン博士

20~35歳 36~50歳 51~65歳
~30年(257人) 0.4 0.7 1.8
  • 初診時年齢
  • 継続来院年数
  • 単位:本

出典)Axelsson et al. (2004)

4mm以上の歯周ポケットの分布(%)

下の表からは、歯周病が疾患とされる歯と歯肉の間の溝の深さ(歯周ポケット)4mm以上が、定期的にメインテナンスを受診されている方は6年後には4mm以上の歯周ポケットが3.5%から0.4%に減っています。一方、メインテナンスを受診していない35歳以下の方は6年後には4mm以上の歯周ポケットが、2.2%から7.6%に増えていることがわかります。

メインテナンス群

  • 最初の2年間は2ヶ月毎のメインテナンス
  • その後4年間は3ヶ月毎のメインテナンス
  • 内容:染め出し、TBI、スケーリング、PTC
メインテナンス群 研究開始時 6年後
35歳以下 3.5 0.4
36~50歳以下 8.3 0.2
51歳以上 8.4 0.6

非メインテナンス群(=定期検診)

  • 年に1回公立歯科医院にて口腔内Check
  • 問題が見つかれば治療
  • 口腔衛生指導も含め、予防処置は6年間なし
非メインテナンス群 研究開始時 6年後
35歳以下 2.2 7.6
36~50歳以下 6.6 11.7
51歳以上 10.6 18

メインテナンスとホームケア

年に4回(3ヶ月ごと)にメインテナンスを受けていたとしても1年365日の内の4日でしかありません。メインテナンスで除去したバイオフィルムの定着を防ぐためにも残りの361/365日のホームケアが重要です。

定期的なメインテナンスを行うことで治療した歯でも長持ちさせることができます。

日吉歯科診療所※に長期に通われている患者さんたち

(※山形県酒田市開業)

たくさんの患者さんたちが長期に渡りメインテナンスを受けています。

「健康寿命を延ばす」

健康寿命とは、日常的に介護などを必要とせず、健康で自立した生活ができる期間を指す言葉です。病気になってから病院にいくのではなく「健康を自分で守っていく」という姿勢が大切です。
歯が健康な人ほど、元気で自立した生活ができるというデータもあります。

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