予防歯科の価値訴求に向けた新たな取り組みのご紹介
開催内容
2021年1月28日(木)
- 18:30-18:35
- ご挨拶
- 18:35-18:55
- 富士通の予防歯科の取り組みについて
【富士通株式会社】 - 18:55-19:15
- Live Update.1
・M,デンタルクリニックのクラウドの捉え方【丸山 知里さん(M,デンタルクリニック松野歯科 山梨県甲斐市)】 - 14:55-15:15
- Live Update.2
・新機能「診査結果報告書」を使用しての患者・当院の感想
・富士通予防歯科クラウドサービスの活用方法 ~COVID-19流行下における非接触の情報提供について~
【遠藤 純聡先生(ホワイト歯科 埼玉県上尾市)】 - 19:35-19:45
- 富士通予防歯科クラウドサービス ~新サービス導入に向けたご紹介~
【富士通株式会社】 - 19:45-20:00
- QA対応/ディスカッション
講演ダイジェスト
富士通の予防歯科の取り組みについて
~予防歯科が当然になる社会を共に目指して~
乗次様(富士通株式会社ヘルスケア事業本部)
私達は富士通健康保険組合と連携し、全国の富士通グループ社員とOP医院を繋げる取り組みを展開しております。ただ単にOP医院を紹介するだけではなく、社員が予防歯科の必要性を理解し、自ら行動変容を起こすことが重要であると考えております。そのために定期的に社員向け予防歯科セミナーを開催し、OP歯科医師を講師としてお招きしております。その結果が実を結び、昨年より当社の健康経営方針に「予防歯科の取り組み」が含まれることになりました。 以前は地区別に実施してきた予防歯科セミナーですが、2021年4月より富士通グループ全体に拡大することになりました。また予防歯科をより身近なものにするべく、IoT歯ブラシメーカーとの連携も進めております。これまで当社が培った経験やノウハウをモデル化して、他企業へと拡大し、本取り組みの輪をさらに大きくしていきたいと考えております。
今後も富士通は日本に広く予防歯科を普及させるために努めてまいります。本取り組みは歯科医院の皆様のご協力なくしては実現できません。ぜひご支援ご賛同の程よろしくお願いいたします。
予防歯科プロジェクトのこれまで
大浦様(富士通株式会社ヘルスケア事業本部)
【歯科クラウドの変遷】
- 2017年
- ・熊谷崇先生(日吉歯科診療所:山形県酒田市)と出会う
・歯科クラウドサービスの開発、提供開始 - 2019年
- ・資料作成向け「歯の健康ファイル」テンプレートを提供
- 2020年
- ・新機能「診査結果報告書」を提供開始
乗次のご案内通り、システム改善と平行し社内関連部門とも連携を進めております。富士通健保組合では社員のメインテナンス費用補助や予防歯科セミナーを開催し啓発・啓蒙に努め、さらに2020年度の健康経営方針には「予防歯科」が加わり、全社員を対象に取り組みを強化しております。
【2021年度の取り組み】
さらなる予防歯科の普及のため富士通健康保健組合と連携し、社員向けの歯科検診制度をOP医院に受入元になっていただく仕組み作りを構築中です。またOP医院と一緒に予防歯科啓発セミナーを実施し、企業連携を通じた新たなサービスの創出に挑戦していきたいと考えております。そしてこの仕組みをモデル化して他の健保組合・企業への展開も進めて参ります。本取り組みは当社だけではなく、OP医院の皆様と一緒に予防歯科の認知・普及に努めて参りたいと思います。ぜひご支援ご協力の程よろしくお願いいたします。
M,デンタルクリニックの歯科クラウドサービスの捉え方
丸山 知里さん(M,デンタルクリニック松野歯科 山梨県甲斐市)
当院は2003年の開業です。当時の日経BP社のアンケートによると、医療機関が好まれる最大の理由は「医師の説明のわかりやすさ」でした。そこで開業時にはまだ珍しかった口腔内カメラ・画像管理ソフトを利用し、情報提供に徹してきました。その理由は、患者の行動変容を促すと同時に、私たちの歯科医療を理解してもらいたいという思いからです。
導入当初、健康ノートからクラウドへの切り替えに不安もありましたが、クラウドの優れた点は紙媒体では限度があった、レントゲンや口腔内画像を高画質で提供できるうえ、口腔の改善具合も履歴で確認できる点です。そのため患者は「健康とは如何なるものかを実感しやすく、その状態を維持することの意義」に気付いていただけます。
当院でクラウドサービスをご利用いただくまでの流れ。
- 問診票にメールアドレスを記入していただく
- 当院からクラウド登録依頼メールを送信する
- 受信メールより登録手続きを行う
- 各チェアサイドの画像管理ソフト搭載PC端末にて、画像データにコメントやイラストを加えて、そのデータを抜き取る
- クラウド作業専用のPC端末にデータを入れて、患者さんの端末へと送る
導入当初は高齢者からの抵抗を感じましたが、今ではどの年代の方でもスマホやPCを利用されているため、登録後は問題なく利用されています。多くの患者の感想として「頻繁に自分の口の写真や歯周検査結果を見ることはないが、情報を開示してくれていることに安心し満足している」との声をいただいております。また安心して通っていただける様に、院内のコロナ感染予防対策を動画にまとめてクラウドで発信しています。今後も患者自身の情報だけでなく、院内の取り組みについても発信していきたいと考えております。本日、皆様に一番お伝えしたかったことは「クラウドサービスは患者さんと“情報の共有”だけではなく“価値の共有”ができる」ということです。
新機能「診査結果報告書」を使用しての患者・当院の感想
クラウドサービスの活用方法 ~COVID-19流行下における非接触の情報提供について~
遠藤 純聡先生(ホワイト歯科 埼玉県上尾市)
当院は2009年に開業し、2013年にオーラルフィジシャン育成セミナーを受講しました。本題のクラウドサービスについては2017年のサービス開始当初より導入しております。また医院の外看板にはお馴染の「KEEP28 全ての歯を守ろう!」のロゴを掲げております。
【当院のクラウドサービスの捉え方】
- 患者が自身の口腔健康状態を理解し自己解析するもの
- 医療者が資料を作成する過程で患者の状態をより理解するもの
- 診療所と患者を結ぶツール
我々利用者も資料を作成する過程で、より患者の状態を理解できます。やはり患者毎にパーソナライズされた資料を作成しておりますので、性別・職業・生活リズム等も考慮してコメント等も記載しております。
以前はメインテナンスの来院サイクルだけでは、モチベーションを保つことが難しい患者が一定数おりました。その対策として、次回来院されるまでの期間に、クラウドで情報提供を実施することにしました。このワンクッションを入れることでモチベーション維持にも効果が表れ、ドロップアウトされる患者が減少いたしました。
【モチベーションアップに必要なこと】
- クラウドデータをチェアサイドで一緒に確認し解説する
- 患者さん自身の端末で確認することで、初めて自分事として捉えることができる
- 来院時以外もこまめにデータ提供をすることが非常に有効
当然ながらデータ提供の回数が多いと衛生士の負荷も増しますので、当院も模索しながら実施しております。
【モチベーションアップの事例】
- 口腔内写真を自宅でじっくり見ることができ、「銀歯の数の多さや、自身の口の汚れを実感し改善したい」と思った。
- 子どもの検査結果を親が見ることでリスク状態がわかり、管理できるので助かる。
- 喫煙と歯周病に関連があることを資料を通して理解でき、禁煙に成功した。
診療所では「恥ずかしさもあり口腔内写真をじっくり見ることはないのですが、スマホ端末の場合簡単に拡大でき細部まで確認できるのが良い。」とのご意見や、お子さんの場合は親御さんのアドレスにクラウドデータが届きますので「安心します。」と好評をいただいております。
【新機能「診査結果報告書」を使用して(2020/09/03リリース)】
- 私の歯は何本残っていますか?
- 神経を取った歯は何本ありますか?
- 私のむし歯は何本ですか?
この様な質問を良くいただきます。患者は残存歯数や無髄歯の数を通して、自身の口腔の状態に興味を持っていることがわかります。私もその都度答えているのですが、毎回聞かれることも少なくありません。これを自分事にして解決してくれるのが「診査結果報告書」です。本システムは直感的でわかりやすい診療カルテが表示されます。むし歯や治療済みの歯の本数でしたり、折れ線グラフで患者の残存歯数やDMFT指数を全国平均と比較することができます。
【患者さんの声】
- 1本も歯を抜いたことがなく大丈夫だと思っていたら、無傷の歯が7本しかなくて焦った。
- シンプルな情報で見やすいため過去の状態と比較しやすい。
- 歯肉炎のある歯の本数が多いので減らしたいと思った。
- 歯周ポケットが%ではなく本数で表示されるので分かりやすい。
- 残っている歯の数が平均より少なくてショックだった。今後は1本失いたくないと思った。
様々な声がございますが、やはり本数で表示されるため非常にわかりやすいと好評です。「診査結果報告書」は患者に自己解析を促すことができるので、自分事として捉える良いきっかけになるのではないかと思っております。
【歯の健康ファイルと診査結果報告書を比較すると・・・】
歯の健康ファイル
- 資料作成に時間がかかる
- 診査結果を全て自分の手元で確認することが可能
- 歯科の知識を高めることができる
診査結果報告書
- 簡単に作成できる
- 必要最低限の情報を短時間で確認できる
- 診療所と患者双方がクラウドサービスに慣れやすい
【コロナ禍のクラウドサービス活用法】
感染症対策として、タッチレスで使用できるツールを探していたところ、歯科クラウドサービスを導入していることに気付きました。クラウドは「歯の健康ファイル」「診査結果報告書」を患者と共有できるだけでなく、そもそもが情報提供サービスですので、医院独自の資料も自由に共有できるのです。
以上のことからも、以前は紙でお渡ししていた料金表、治療計画書、同意書等をクラウドサービスを利用して提供しています。この様に感染症対策の一環としても活用できますし、結果的にプリントの削減になりペーパーレス化も図れました。今後はこれに留まることなく、新たな活用法を見出したいと思っております。
オーラルフィジシャン育成セミナーについて
松野英幸 先生(M,デンタルクリニック松野歯科 山梨県甲斐市)
オーラルフィジシャン育成セミナーは、2004年に山形県の日吉歯科診療所でスタートし、これまでに57回開催されました。2004年~2021年までの歯科状況の変容といえば、当時12歳時のカリエスは2本だったのが、現在は0.2本になり、約10分の1に減少しています。そして80歳の残存歯数においては、当時8本だったのが約15本と倍増しています(歯科疾患実態調査:厚生労働省)。やはりこれも熊谷崇先生が書籍やメディアを通して、啓蒙を行ったり、予防歯科に勤しむ受講生を、全国に排出していった結果による賜物ではないかと思っております。そして、この57期で酒田での開催は終わりとなり、58期以降は僭越ながら私が引き継ぐことになりました。
願いとしましては、熊谷崇先生が約20年近く携わってこられたこの活動を絶えることなく引継ぎ、今後も皆さんと一緒に共有していきたいと思っております。そして企業の方々にも、私達の医療の質に注目していただき企業連携が始まりました。ご興味のある方は、ぜひオーラルフィジシャン育成セミナーを受講していただき、私たちの仲間となっていただけましたら幸いです。
【歯科クラウドサービスのご紹介】
前野様(富士通株式会社ヘルスケア事業本部)
当サービスは医院から患者に口腔資料を提供するサービスです。医療情報は個人情報の中でも厳重に取り扱う必要があり、国が定める医療情報取り扱いガイドラインに準拠したVPN回線(暗号化)を用いるため、安全性に配慮しております。患者資料の提供方法は大きく分けて2通りです。
1.「歯の健康ファイル」
- 個々の患者向けに送りたい写真・レントゲン・各種資料やコメント入力を行い提供する。
2.「診査結果報告書」
- 歯の本数、治療本数、PCR 等の必要最低限の情報を簡単に素早く入力し提供する。(カテゴリー分けされた歯の本数の入力ですので、チェアサイドにて短時間で行える)
- 初診時の口腔状況から、治療・メインテナンスを経た口腔状況をデジタルで蓄積。患者自身の口腔に関する関心・理解を高めていくツールとなります。何より、チェアサイドにて歯科衛生士と患者のコミュニケーションツールとしてご利用いただきたいです。
診査結果報告書は、患者目線で誰が見ても分かりやすい直感的な資料です。これにより自身の口腔内の興味関心や、予防歯科の理解を深めていただければと思っております。
【運用支援向けサービス】
前述の「歯の健康ファイル用テンプレート」(pptファイル)を提供しております。テンプレートに画像を挿入したり、コメントをご記入いただきご利用ください。 尚、テンプレートはMTMに沿って(初診時、初期治療、再評価1、再評価2、メインテナンス)ご用意しております。また、テンプレート以外のファイルも患者さんと共有できますので、貴院オリジナルの資料がございましたら、そちらをご利用いただいても構いません。運用方法は各医院様にお任せしております。その他に「院内掲示用ポスター」や「患者登録用リーフレット」等の配布資料データもご用意しておりますので、クレセル社までお問い合わせの程お願いいたします。
セミナーを終えて
富士通株式会社
当社が予防歯科に取り組む目的、意義について、まだまだOP医院の皆さまにご理解いただけていないと感じおります。当社の取り組み、提供するサービスにおいては、定期的に情報発信させて頂きますので、次回以降の当社セミナーへの参加をお待ちしております。