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だいふく歯科:​井上大基先生

当院はEBMに則り、過不足の無い予防医療を提供します

EBMに則り過不足の無い予防医療を提供

開業から約6ヶ月経過しましたが、現在の感触はいかがですか?

 ご来院いただいた患者さんのほとんどが、その後も継続して通院されています。急性の痛みを主訴に来院された方もスタッフとのコミュニケーションを通じて、歯を守るための正しい知識と技術を身に付ける意義を感じてくださっていることがうかがえます。
 結果として、開業後間もない状況ですが、初診患者さんの85%は初期治療を経て定期メンテに移行しています。当初は一年後を見据えた目標でしたが、医院一丸となり、予防歯科として成長を実感しています。

開業前の院内システムづくりについてどのように配慮されましたか?

 医院を支えるのは人である、という点です。当院はEBMに則り、過不足の無い予防医療を提供する歯科医院ですが、岡山で同質の医療を提供している歯科医院はありません。私にとっては手に馴染んだ医療でも、他のスタッフにとっては目にすること、耳にすることすべてが真新しいものでした。開院に際し、最も力を入れるべきポイントは歯科衛生士の知識技術の向上であると考えています。
 一方で未知の医療を押し付けられては疲弊してしまいます。無理なくスキルアップできるように一般の倍の研修期間を設けるとともに、いかに新しい知識を身に付けたいと思ってもらえるかを重視しました。また、到達不可能な目標を強要することが無いように、開院前後数年間のロードマップを描き、現在もそれに沿った医院づくりを行っています。

常に予防の本質を捉えた歯科医療を提供することが、患者さんから信頼を得ることに繋がります

院長職の価値を見出す

開業前のキャリアや学びについて教えてください。

 岡山県倉敷市で2医院勤務した後、チョコレート歯科医院で予防歯科診療を学びました。最初の勤務先は予防歯科として地域で有名な医院でしたが、患者さんの口腔内環境は劣悪でした。予防歯科医療の実践を志していた当時の私にとって、本当に効果のある予防医療とは何かを追い求めるきっかけになりました。

開業前の3年間はチョコレート歯科(栃木県鹿沼市)に勤務されていましたが、他院での勤務と明確な違いがありましたか?

 医療の質については最新のEBMをもとに診療が行われていました。そしてその姿勢がスタッフに浸透していました。その成果とも言えるのが初診患者さんの1年後の定期メンテ継続率が9割近いことです。周辺地域には歯科医院が立ち並び予防歯科を標榜している中でチョコレート歯科医院が信頼を得ているのは、常に予防の本質を捉えた歯科医療を提供していることによると解釈しています。
 当院と同様、過去に定期メンテに通院していたという初診患者の口腔内には大量の歯石が沈着し、う蝕、歯周病が進行していることが標準でした。なぜ虫歯ができるのか、定期的に除去していた歯石とは何なのか、といった基本知識も有していません。十分な時間を設け、患者さんのリスクや理解度に寄り添いながら学習、必要な教育を行うことで質的に差別化された歯科医療を提供していました。

チョコレート歯科のスタッフ育成で参考にされた点はありますか?

 チョコレート歯科で大切にされていた、限りある人的資源を浪費しないこと。組織を自走させるためには、多くの衛生士が理念に共感し、自ずと職を楽しみ、誇りに感じ、成長を望む環境づくりが大切であるということをいつも心に焼き付けています。院長職の価値は、ここにあります。指示的、命令的な態度を律し、内面的な繋がりを優先していました。
 仮に衛生士が医院方針についていけない事態に陥ったとしても、当院と合わなかった、もしくは衛生士の能力不足などと捉えるよりも、院長の力量不足を認識し、自らを改善した方がよほど有意義という考えを目にしてきました。このような考えを引き継ぎ、開業後も予防歯科の主役は衛生士であることを認識し、私は彼女たちが信頼のおけるマネージャーであるよう日頃から心がけています。

正しい知識の共有が、地域の口腔衛生状態を大幅に改善できるということに、やりがいを感じます。

歯を守るための正しい知識を患者さんと共有

開業地である倉敷市の地域特性について口腔内環境の観点から感じることはありますか?

 歯科医院を定期受診されている方が多くいらっしゃるように感じます。そして先ほどと重複しますが、多くの方が、むし歯や歯周病の再発、進行を食い止められていない状態で来院されます。歯を守るための正しい知識を共有することで、地域の口腔衛生状態を大幅に改善することができることに、大きなやりがいを感じます。

今後の展望を教えてください。

 プラークコントロール偏重のむし歯予防など、予防手段のアップデートされていない知識を与えられた患者さんとよく出会います。開業地である倉敷市では、定期健診受診率は50%を超えていますが、いくら通院しても口腔の崩壊が止められなかったとき、患者さんは予防歯科医療に諦めを抱くでしょう。EBMを道標に成果の出る予防歯科医院としての地盤を固めるとともに、健康を求める患者さんの受け皿となる仲間を増やす院外活動も僅かながら行っていきたいです。
 また最前線で患者さんと向き合う衛生士をリスペクトし、彼女たちが自ら楽しく、誇り高く、成長を望みながら勤務できるようさらに環境を整えていきます。しかし予防スキルを高めるだけの人生ではありません。人にはそれぞれに他の欲求があります。そこにも十分に配慮し、マネジメント力を高めていきます。
 そのための活動として現在も、宇野先生(チョコレート歯科医院 院長)、私を含め、開業前後の先生方を中心に院長職の資質を高めるためのミーティングを定期的に行なっています。

先生による自己評価(5点満点)