平井克明先生:平井歯科医院
平井先生の志・指針について
歯科医師を目指そうと思ったきっかけ・動機について教えてください。
歯科医師になったのは家が歯科医院だったからです。特に考えもなく跡を継いで歯科医師になるんだという漠然とした考えが子どもの時からありました。
歯科大学に入学してから現在に至るまでの経緯・学びについてお聞かせください。
漠然と歯科医師を目指していたため、大学時代は部活と京都の寺めぐりをして過ごしていました。卒業後は父親の知り合いの歯科医院に勤務し、卒後4年目で家に帰り父親と2人で臨床にあたりました。
勤務医時代、新聞に『歯無しにならない話』という記事が載り、歯を抜かないようにするという内容に大いに感銘を受けました。その時から歯を残すという診療に大きく傾いていくことになります。歯を残すということが自分の中に定まってからは各種セミナーに参加をするようになりました。ただ、しっかり勉強をする機運となったのは熊谷崇先生のセミナーを聞くようになってからです。科学的な根拠を持って歯を残すこと、そういった診療を行うために学び続けることが必要になりました。現在も各種セミナーに可能な限り参加をしています。
現在の地(大阪市)で開業された理由を教えてください。
私の場合跡を継いで歯科医院を継続していくことが念頭にありましたので必然的に現在の場所となりました。
熊谷先生との出会い・“聖地”日吉歯科での学び・実践について
平井先生はオーラルフィジシャン育成セミナー(2006年10期)を早い時期に受講されておりますが、きっかけは何だったのでしょうか。(2019年3月現在 60期)
2003年頃から熊谷先生のセミナーがあれば受講を続けておりました。2005年に京都での講演の折、酒田でセミナーを行うようになったのでみなさん酒田に学びに来て下さいとおっしゃいました。日吉歯科という既に理想的な診療が行われている、いわば聖地で熊谷先生から学べるチャンスに心ときめかせて参加を決意いたしました。
KEEP28を達成するためには予防が非常に重要です。貴院が予防歯科を実践する上で軸にしているMTM(メディカルトリートメントモデル)と世間一般的な予防歯科との違いは何でしょうか。
MTMの成果は歯科衛生士が初期治療の中で患者さんに教育を行うことで患者さんの歯に対する価値観が高まることと思っています。ただ単なるお掃除を繰り返すだけではなく、結果としてメインテナンスが定着し生涯御自身の歯で生活できる人を増やすことが違いであると思います。
採用・教育・マネジメントについて
患者さんが予防歯科の重要性を理解し継続的にメインテナンスに通っていただくために行っている取り組みについて教えてください。
MTMの改善を続けること、これは院長とスタッフの力量アップ、また患者さんの成長に合わせ、環境の変化に合わせて変わり続けなければいけないと思っています。5Sの徹底、待合室での啓蒙ビデオ、院内新聞の発行、患者セミナー、医院の前に出しているブラックボードなども患者さんの理解の助けとなるように行っています。
現在、歯科界では歯科衛生士の採用に多くの医院が苦労されています。
なかでもオーラルフィジシャン歯科医院では、患者担当制や日常的な学習等により敬遠される傾向が少なくありません。その様な状況で歯科衛生士の採用・雇用について、工夫されていることがございましたら教えてください。
当院の歯科衛生士採用時には業者に依頼して地域のすべての歯科衛生士学校に求人を出しています。またほぼ新卒で採用すること、必ず医院見学に来てもらうこと、その時には当院の歯科衛生士と話が出来る時間を設けることなどを行っています。見学に来てもらうのは来院した際、スタッフ全員の目で採用者を見極めることが出来るから、応募した側にとっても医院の雰囲気がわかって判断がしやすくなるということからです。ただ、問い合わせ自体がない年もあり、思ったように採用するのはむずかしいです。
予防歯科の実践にチームワークや目的意識の共有は必須ですが、採用・教育・マネジメント面で大切にしていることは何でしょうか。
採用において本人の人間性を重視しています。また以前に作った仕組みを残していて教育の手順、力量の評価、またコミュニケーションにおいては週1回のミーティング、朝礼昼礼終礼、カンファレンス、治療後の患者さんの評価をお尋ねする事、サブカルテの記入、患者さんのお言葉ノートなどの取り組みをしています。新年の開始時には毎年その年の方針、目標などを院長が発表してから仕事を始めるようにしています。
今後の展望・展開について
予防歯科をさらに社会に普及させるためには、どのような取り組みが必要になるとお考えでしょうか?
社会的な認知度はここ数年でかなり上がったと考えています。ただ、まだ一部の歯科医師サイドでの対応が十分でないことが普及の妨げになっていると思われるので、歯科関係者への教育を進めていくことが大切だと思います。とりわけ患者さんに直接関わる歯科衛生士の仕事の素晴らしさをすべての歯科衛生士さんに理解していただきたいと思います。そうする事で多くの一般の方達の歯の価値が高まって行くのではないでしょうか。
現在OPで取り組んでいる「医と産業の連携」について、今後の方向性・可能性に対して先生のお考えをお聞かせください。
現在、方向は良い方向に向かっていると思います。また、今後の国民の口腔の健康に大きく貢献する可能性も高いと思います。ただ大手企業との連携は歯科側の対応が十分でないところが問題ですが、ギャップを埋めるのには時間がかかると思われます。
企業の方におかれては福利厚生の観点からの支援だけでなく、健康を増進する為の口腔に対する情報提供を進めていただけたらと思います。歯科側からもより多くの情報を企業に向けて発信する必要があると思います。ただ現在の日々の診療の中において今来院されている目の前の患者さんの歯の価値観を最高に高めていくことを続けていけば目標に近づくことができると考えています。
最後に貴院の今後の展望・展開について教えてください。
KEEP28の達成のため今後もMTMの改善を続けること、何より質を高めて来院者の健康に貢献できること、当院で働くスタッフが誇りを持って働くことができるように環境を整え更に向上していきたいと思います。微力ではありますが地域において口腔に対する価値を高め、健康な生活を営むことに貢献できたらと思います。将来的には日本人の口腔の状態が世界一の水準となることを目標にして、今後は次の世代の育成に取り掛かっていくことを検討しています。