山中歯科医院:榊原麻維さん
当院の診療の特徴と私の役割
当院では『美しい身体と精神を育む』という医院理念のもと、健康観を高める予防を行い、医療の必要ない社会づくりに口腔から貢献できるよう取り組みを行っています。例えばマイナス1歳からの予防歯科として、妊婦さんはもちろん、これから妊娠を望まれている方やそのご家族も含めて食生活習慣について聞き取り、栄養についてお話しすることもあります。
またどの世代に対しても力を入れていることは、病気を未然に防ぐためにリスクを把握し、病気が発生する前にリスクを改善することや、口腔の健康が全身の健康に大きく関係していることを、診療を通じ患者さんと共有することです。そのために健康診断時の血液検査のデータを持参していただき、共有することもあります。
医院の私の役割は、歯科衛生士として診療にも携わっていますが、特に最近は院内だけではなく地域に貢献できうように、マネージャーとして啓蒙活動の立案や企画を行い、実行していくという役割を担っています。
幼少期に通われていた歯科医院での思い出
予防歯科とはほど遠く、従来の治療型の歯科医院でとにかく歯科医師が怖く、口の中に手をこじ入れられて終わった後に、優しい女性の方がフォローに来てくれるということだけを覚えています。今となってはその方が歯科衛生士さんだったのか、歯科助手さんだったのかはわかりません。
歯科衛生士を志した理由
私は高校生の時に歯科衛生士という職業を知りました。当時は誰かの役に立ち、ありがとうと感謝される職業に就きたいと思っており、医療従事者を目指し理系のコースだったのですが、医療ドラマを観ただけでも貧血になるほど血が苦手だったので、看護師になることを諦めていたところでした。
そんな時、歯科衛生士という職業を知り、医療従事者でグロテスクな場面に出くわさないなんて最高!と思い込み、どんな職業か本来の仕事内容は知らないまま、歯科衛生士学校に進路を決めました。今では当時の自分が無知で良かったと思います。
衛生士学校での学びや思い出
全てが思い出です。県立の学校だったので校則も厳しく、成績も油断するとすぐに転げ落ちるほど周りの学力が高く、とにかく必死でした。
その中でも夏休みには海に行ったり、合コンをしたり、実習をやり切った後にはクラス全員で飲み会をしたり、ザ・青春という時期は正しく歯科衛生士学校時代でした。一緒に学び、切磋琢磨し実習をやり抜いた仲間は今でもとても深い繋がりがあり、会うといつも思い出話で盛り上がります。
現在所属の医院を選んだ理由
以前勤めていた勤務先に不満は無かったのですが、歯科衛生士になり丁度10年という節目で、この先20年後30年後の歯科衛生士として活躍する自分の姿を、その時、その職場では想像できなかったことが、とても大きかったです。歯科衛生士学校を卒業する時、私はどんな歯科衛生士を目指していたのかを考えるようになり、職場を変えようと決意しました。『歯科衛生士が主役の予防歯科をつくりたい』という院長の想いにご縁を感じ、20年30年と歯科衛生士をするならここだと思い応募しました。
メインテナンスの際に心がけていること
口腔内に興味をもってもらえるように、患者さんご自身に前回との比較を行ってもらい、患者さんの言葉で考察してもらうように心がけています。
また来院の度に、一つか二つの新しい情報を持って帰っていただけるように、口腔のことだけでなく、全身疾患や栄養、保険制度の限界についても、情報提供するようにしています。
患者さんとのコミュニケーションで心がけていること
患者さんを承認するということです。いくらこちらが良い情報や正しい情報を伝えたところで、患者さんが否定されたと思うと上手く伝わらないからです。また患者さんの言葉を拾うということも常に心がけており、不安や恐怖感、健康や口腔に対しての価値観は、患者さんの言葉にはたくさん隠れています。
なぜそのような発言をするのか必ず真意が隠れており、その中には決してプラスのことばかりではありませんが、患者さん自ら語る言葉には、信頼を築くヒントがたくさん隠されていると考えています。
患者への「診療情報」の説明(クラウドサービスなど)とその患者理解について
まず初診時にDVDを閲覧いただき、医療面接を行います。その後、16枚法、口腔内写真と顔貌の13枚、歯周精密検査6点法を行い、その情報を基に患者さん自身が資料を読み取る力をつけられるように説明しています。
カリエスリスクは唾液検査、歯周病リスクはOHISを利用し、チェアサイドで患者さんと結果を共有しますが、クラウドサービスでご家族同士でデータを共有している方もいます。しかし、中には登録はしているが活用が難しい患者さんもいるため、いかに多くの方とクラウドでデータを共有し、ご自身の口腔内に更に興味を持っていただくかが今後の課題だと感じています。
クラウドサービスを利用して診療情報を患者さんと共有することに対しての患者さんの反応、スタッフの労力、その効果などについて
患者さんの反応は良いことが多いです。効果としては特にご家族で来院されている患者さんで、ご夫婦や親子でBOPやPISAを3カ月ごとにどちらが低いかなど見せ合うなどして、家族間で相乗効果のようなものが生まれていると思います。
クラウドサービスに関しての労力ですが、チェアタイム時間内でのデータ入力が難しいため、他のスタッフにも協力していただいている状況です。こちらに関しても、もっと効率良くデータを入力し、クラウド内での資料を共有していくことが当院の課題です。
歯科衛生士として成長したと思う時
歯科衛生士としてはまだまだ新人だと思っていますし、まだまだ成長していきたいと思っています。
その中で、はじめは手技を習得することに、とにかく一生懸命になり精一杯でした。しかし最近では手技よりも患者さんとの信頼関係を築くことに力をいれています。どんなに立派な手技を持っても、患者さんが歯科衛生士を信頼してなければ、来院は途絶えてしまいますし、何よりも患者さんの行動変容は生まれません。
患者さんとの信頼関係を築き、患者さんが自ら行動変容を起こした時は、本当に嬉しく思うと同時に自分自身の成長を感じます。これからも患者さんとの信頼関係を大切にし、寄り添っていくことができる歯科衛生士を目指し、精進していきたいと思っています。
スキルアップのために心がけていること
良いなと思ったセミナーや研修には場所や日時、費用など何も考えず、まずは受講するよう心がけています。技術や知識は常に学び続けなければ、現状維持は衰退と同じであると考えるからです。常に前進し、昨日よりも今日、今日よりも明日と、成長し続けられる自分でありたいと思います。
また今後は症例発表にも挑戦し、自分が行ってきたことを見返すことや、意見をいただく場を設けていきたいと考えます。
歯科衛生士の仕事をしていてよかったこと、嬉しかったこと
健康に対する認識が変わったことです。そして自分自身や、大切な家族、縁ある人々を健康に導きたいと思うようになりました。きっと病気を未然に防ぐことができる職業だからこそ、健康について深く考える機会を得ることができたと思います。
嬉しかったことは、やはり患者さんからいただく感謝の言葉です。毎日のように『ありがとう』や『ここにきて良かった』『あなたのような歯科衛生士に出会えて良かった』など言っていただける職業は、歯科衛生士しかないと思っています!
ご自身が思う、良い歯科医院(知人にすすめたくなる等)の条件とは何でしょうか
清潔、整理整頓されている、清掃がきっちり行われている、身なりが奇抜でない、丁寧、誠実、説明がしっかり行われている、一方的でない、資料をきっちり採る、人の入れかわりが少ない。
貴院に通われている患者さんの口腔内状況やその傾向について
成人の患者さんは臼歯部に補綴物(メタル中心)がたくさん入っている上にコアも金属の方が多く、抜歯になるケースは破折がほとんどです。デンチャーの患者さんは少なく、年代は30代~60代の方が最も多いです。
カリエスリスクが高い方が多く、歯周病リスクはハイリスクとロウリスクの二極化しています。ほとんどの方が不正咬合や、TCHを含む、ブラキシズム傾向が強いです。
小児に関してはカリエスフリーとカリエスリスクがとても高いかの二極化が目立ちます。小児も全体的に不正咬合の傾向がとても強いです。
院長の予防歯科に対する理解度はいかがでしょうか
100%です。
歯科衛生士の魅力とは何でしょうか
やはり『やりがい』を感じられることです。患者さんと接する中で、より健康的に行動変容をした姿を見ると、伝えたいことが伝わった喜びと、その方の人生がより豊かになるお手伝いができたのではないかと感じます。
また、患者さん自身が自分の大切な方を紹介して下さるご縁も増えてきたことに、更にやりがいを感じる機会が増えました。縁ある方々が健康に豊かな人生を送るお手伝いができるこの仕事は誇りに思います。
歯科衛生士を生涯続けますか
はい、続けます。天職だと思っています!
今後の目標について
近い将来の目標は、日本歯周病学会の認定歯科衛生士と日本臨床歯周病学会の認定歯科衛生士になることです。
新卒の時に一度目指していた時期もあったのですが、結婚出産と経験するといつの間にか家族や子どもたちのことでいっぱいいっぱいになり、どうせ無理だろう、そんな時間はない、と自分で決めつけて諦めてしまっていました。
しかし、最近認定を取得された方のお話を聞き、やるならとことんやろう!と決心しました。そしてもっと遠い将来の目標として、自院の中だけではなく地域に向けて、口腔から全身の健康と豊かな人生をサポートする歯科衛生士になることです。歯科衛生士は全身の健康を守る素晴らしい職業であることを伝えていける存在になることです。
これからの歯科衛生士の働き方
歯科衛生士は歯科医療従事者として、口腔内だけではなく、患者さんの全身やその患者さんの背景までをも診ることができる職業だと思います。
口腔内の歯肉や歯、粘膜だけでなく、全身疾患、生活習慣病、喫煙、食育、栄養、発育、口腔機能、嚥下などさまざまな分野を深く学び、全身を診ることが可能な歯科医療従事者として、地域や社会に貢献することで、さらなる活躍の場を広げることができると思います。
好きなケアグッズ
- タフト24
- フロアフロス
毛先の柔らかさの種類が豊富なため、患者さんに合わせた処方ができるのが好きな理由です。
膨張率と384本が織りなす繊維が絡めとるプラークの除去率は圧倒的です。
使用しているキュレット
- ヒューフレディ
- アメリカンイーグル
道具の手入れ方法
ヒューフレディのカード型シャープナーを使用し、普段はエクストラファインで患者さんごとにシャープニングをし、細くなってきたキュレットはファインでミニファイブになるようキュレットを育てています。
参加してよかったセミナー
- DrHIROのベーシックオープンコース
- DrHIROの衛生士ペリオ実習コース
- スカンジナビアンペリオ(福井秀和先生)
- ドクターオカザキの連続5回講座
- 奥山会SRPセミナー
愛読書・雑誌(歯科関係)
- 「21世紀のペリオドントロジーダイジェスト」著者 天野敦雄
- 「6ミリ以上の歯周ポケットも改善できる8つの階段」著者 谷口威夫
- 「世界最強の歯科保健指導 上下巻」著者 岡崎好秀
修了セミナー・所属スタディーグループ
- DrHIROのベーシックオープンコース
- DrHIROの衛生士ペリオ実習コース
- スカンジナビアンペリオセミナー
- 奥山会SRPセミナー
- 歯科衛生士スタディ―グループ奥山会