東北地方 バックナンバー

  当院が専門とする矯正歯科は、極めてユニークな医療です。ほとんどの医療行為は、ホメオスタシスで守られる平常状態（ベースライン）から低下した健康状態が異常な状態（疾病）だと認識され、元のベースラインに戻すという行為です。たとえば風邪を引いた時は、その症状を抑え、いつもの生活ができるように回復させる治療を行います。虫歯を詰める治療は、虫歯で穴ができたマイナスを充填することで平常の機能に戻すものですが、もとの健康な歯質には戻りませんから、ゼロベースに近づける治療と言えるかもしれません。予防歯科は、平常を平常のまま維持するという医療です。つまり、ほとんどの医療は、ゼロベースがマイナスになったりマイナスになりそうな時に、ゼロベースに可能な限り戻したりゼロベースを維持することを目的に治療がなされます。
　しかし矯正歯科は違います。そもそもがゼロベースまたはマイナスの状態だったのを、ゼロベースを越えてプラスに変換させ、その人の可能な限り高いプラスの状態、良好な状態を作り上げるのが矯正歯科医療です。たとえば少年少女期に問題を持つゼロベースラインであっても、成長発育のプロセスに矯正治療という手段で介入し、好ましくない成長発育や口腔機能の変化を軌道修正し、より望ましい成長発育や機能の獲得を促すことで、大きなプラスに向上させた健康なベースラインを獲得し、新たに良好なホメオスタシスとして、豊かな生涯を送れるようにするのが矯正歯科治療の目的と言えます。
　きれいな歯並び、華やかな笑顔、美しい口元、美しいお顔のバランス、しっかりした噛み合わせ、良好な咀嚼、健康で豊かな食生活、美しい発音、明晰な言語コミュニケーション、積極的な交友関係、容姿への囚われからの解放、生きる力の向上など、矯正歯科治療で得られることは、たくさんあります。しかし、矯正歯科治療の真の目的は、壮年期・老年期を通じて健康な状態を維持しやすく、健康で美しく楽しい人生を全うできる基盤という、「生きる力」のプラスとなるものを築くものだと言えます。矯正歯科治療を行い、高い健康観と健康な口腔の基盤を獲得し、それを適切にメインテナンスすることで、健康な状態を生涯維持することが可能です。
  ですから、良好な歯並び・噛み合わせの素材である歯や歯周組織は、ぜひ健康であってほしいものですし、治療で得た美しい歯周組織と美しい歯列咬合を長く維持するメインテナンスは不可欠です。治療とメインテナンスを通じて培われた自信が生きる力となるよう、データでご自身の状態を正確に把握し、よりよい健康状態を獲得・維持し、美しく楽しい人生を送っていただくお手伝いを、当院では行ってまいります。

診療情報は成人の方にはクラウドサービスにて、小児には健康ノートでご提供します。