石川健先生:我孫子健康歯科
石川先生が歩んだ道・志について
歯科医師を目指そうと思ったきっかけ・動機について教えてください。
父が歯科医師でしたので、私自身も将来は医療関係の職種に就きたいと考えていました。大学を受験する際、浪人を視野に入れ医学部を目指すことも検討しましたが、歯学部に受かった縁や両親のアドバイスを参考にし、歯科大学への入学を決意しました。今振り返ると、父が患者さんと接する姿を見てきましたので、歯科医師への潜在的な憧れがあったのではないかと思います。
石川先生はお父様も我孫子で歯科医院を開業されていたそうですが、現在地で開業された理由は何だったのでしょうか。
当院は2017年に「我孫子健康歯科・矯正歯科」へと名称を変更いたしました。それ以前は「歯列矯正よしだ歯科」という矯正歯科専門医院で、当時院長の吉田惇三先生と父の仲が良かったというご縁もあり2010年より勤務しております。また吉田先生の跡継ぎがいらっしゃらない事もあり、それこそ学生の頃から私が跡を継ぐという話をいただいておりましたので、2012年に院長となり現在に至っています。
石川先生は日本歯科大学卒業後、明海大学歯学部PDI埼玉歯科診療所に入局されましたが、その後、矯正医になる道を選んだ経緯や動機について教えてください。
明海大学の研修施設である PDI 埼玉歯科診療所という日本歯周病学会認定施設で2年間、徹底的に鍛えていただきました。毎日診療後にレクチャープログラムがあり、印象採得の練習や天然歯を用いた根管治療の実習といった基礎的な治療から、月一回のケースプレゼンテーション等を行いながらを学びました。
1年目が終わる頃には100名ほどの担当患者を持たせていただき、そのすべての症例に対して治療計画の立案と指導医のチェックを受けながら臨床を行っていましたので、基礎を叩き込んでいただけたと思っています。その当時は非常に辛かったですが、今はとても感謝しています。2年間の研修後、週4日の大学勤務を続けながら、現在の当院の前身である「歯列矯正よしだ歯科」で院長の吉田先生から矯正治療を学びました。やはり歯周治療を中心に仕事をする上でも噛み合わせは無視できません。歯周病と噛み合わせの乱れにも関係性はありますし、審美的な改善だけではなく、メインテナンスやセルフケアも行いやすくなります。大切なのは歯を失う原因に対して事前にアプローチをすることなので、予防同等に歯並びを整える必要性を感じました。
日吉歯科診療所での学び・実践について
日吉歯科診療所(山形県酒田市)のオーラルフィジシャン育成セミナー(2013年32期)を受講された動機について教えてください。(2019年3月現在 60期)
2012年に友人と一緒にプレOPセミナーを受講したことがきっかけです。正直なところ、予防歯科に興味があった訳ではありません。ただ、日吉歯科診療所の見学や熊谷崇先生から医療の実際についての話を聞いて、「やるしかない」と感じてすぐに本コースの受講を申し込みました。それまでも患者さんの健康のために「治療」を学んできました。でもそれだけでは良い結果が出ない事、より良い医療モデルを患者さんに提供できると教えてもらった訳ですから、前向きに取り組む以外に選択肢はありません。ですからこれまでの治療の勉強と同等に医院改革を行いました。治療と予防は対比して考えるものではなく、お互いの効果を最大限に出す為に必要不可欠なものだと言う医療の在り方は、当院の誇りとなっています。
貴院が診療の軸にしているMTM(メディカルトリートメントモデル)と一般的な診療との違いについて教えてください。
「一般的な診療」が何を指すのかが難しいです。MTMの考え方はPDCAサイクルそのものだと思います。計画→実行→評価→改善、そしてまた計画へ。より良くする為にはこのサイクルが必要です。日進月歩の医療においてもそれは同じです。健康を守る為には細かな変化に敏感にならなければいけませんから、MTMの流れは良い医療に欠かせないものと考えています。医療制度自体がPDCAサイクルが起こりにくいシステムですから、医療現場では、思考を停止させて漫然と同じ医療を提供している例も多くあります。MTMを通してPDCAを大事に考える文化が医院に根付いている事も大事な違いであり成果だと思います。
MTMを学んだことで、矯正歯科治療に対する意識やアプローチに変化はありましたか?
MTMを学ぶ前の矯正治療では、患者さんの中にはプラークコントロールを気にされている方も多くいらっしゃいました。カリエスやペリオの観点が無い状態で診療をしておりましたので、GPとしてペリオについて勉強していた私からすると、気になる個所がたくさんあったのも事実です。実際にMTMを導入した後ですと、患者さん達の協力度も上がりますし、プラークコントロールだけではなく、矯正治療でいえば咬合をつくるうえでもとても重要です。また患者さん達が自身の健康を意識して治療に臨まれている事を実感します。私としても矯正治療を通して、審美面以外の健康や習慣について、患者さんと共有できることを嬉しく思います。
KEEP28を達成するためには、子どもの頃からの予防歯科が非常に重要です。
貴院では小児歯科への取り組みや、その後どのように小児予防・矯正を実践されていますか?
キーポイントは患者教育ではないでしょうか。ご両親の意識や知識レベルも様々ですので、始めはむし歯や予防を入口にして興味を持っていただければと思います。ただ、噛み合わせに関しては治療の開始時期がいつからであるとか、皆様そういったことを殆ど知らない状況ですので、メインテナンスとあわせて口腔内写真データを見ていただきご説明しております。
また最近ですと口腔機能の低下は非常に重たいテーマだと思います。この先むし歯と歯周病が減少していきKEEP28を達成できたとしても、物を噛めないといった状況が出てくるのではないかといった危機感を覚えています。当院はお子さんや若い患者さんも多く来院されますのでより強く感じています。
現在、マイオブレースを含めて矯正治療の在り方も変化してきていますので、衛生士と連携しご両親・お子さんの教育について新たなスタートを切れる良い機会だと思っています。KEEP28を目指すうえでむし歯・歯周病だけでなく、その一つ手前の教育といったところから、より積極的に力を入れていけたら良いなと思っています。
採用・教育・マネジメントについて
現在、歯科界では衛生士の採用に苦労しています。
とりわけオーラルフィジシャン歯科医院では、患者の担当制、日常的な学習などから敬遠される傾向があります。その中で貴院が採用・雇用に工夫されていることはございますか。
担当患者を持って仕事をしたい衛生士の就職希望は多く頂いており、お断りする事も多くなっています。オーラルフィジシャン診療室ではメインテナンスを担当する衛生士にスポットライトが当たりやすいですが、治療部と口腔衛生部との情報共有を円滑にするアシスタント衛生士も同等に重要な職務であると考えています。業務に関わらず、共通理念を持って働く仕事の在り方に魅力を感じる方は多いのではないでしょうか。みんなよく学ぶし、積極的に動くので特に苦労はしていません。ただそのような風土を作るのは確かにとても難しいことだと思います。
予防歯科医療の実践にはチームワークや目的意識の共有が必須ですが、教育・マネジメント面で大切にしていることは何でしょうか。
決して全てが成功している訳ではありません。過去も現在も多くの問題を抱えておりますし、きっと未来もそうであると思います。それをスタッフ全員で受け入れて前向きにチャレンジする事がやりがいに繋がると考えています。個人差はあっても誰もが必ず「患者さんに貢献する」という気持ちを持っていますから、マネジメントの役割はその気持ちが円滑に結果に繋がるようにする事だと思います。気持ちがあってもすれ違う事は多くありますからチームワークにはコミュニケーションの在り方はとても重要だと思います。
診療データの情報提供について
クラウドサービスを利用して診療情報を患者さんと共有することに対して、患者さんの反応、スタッフの労力、その効果などを教えてください。
MTMの流れに沿って診療が進むと、患者さん達のほとんどがご自身の口腔の健康に関心を持ち、フロスを使用し、セルフケアも積極的に行うようになっていると思います。そうすると自分の歯がどうなっているのかいつも把握しておきたいと自然に思うでしょうし、その気持ちにクラウドサービスで応えられると私達と患者さんとのコミュニケーション・連携も上手くいくと感じます。
貴院の今後の目標・展望についてお聞かせください。
当院の長期的目標は「地域医療の常識を変える」事です。 医療としての予防・治療の研鑽はもちろん、地域の中で魅力的な職場として輝く事も重要であると考えています。良い医療を提供する為にモチベーション高く働くスタッフがいるからこそ、患者さんからの支持が得られ、ひいては地域で影響力を持つようになると考えています。口腔の事で疑問がある地域の方が「我孫子健康歯科で聞いたら間違いない!」と思うようになれば、自然に予防ありきの医療が広がると思いますし、それは可能だと思っています。