アジュテ前島デンタルクリニック:前島美佳先生
予防歯科に特化した分院を開業
歯科医師を志した理由について、教えていただけますでしょうか。
両親が医師のため、幼い頃から医療を身近に感じており、物心がついた頃には同じ道に進みたいと考えていました。ただやはり、死に直面する機会も少なくありませんので色々と葛藤が多かったのも事実です。そのような状況の中、姉が医師ではなく歯科医師の道を選んだのです。私は姉のことも尊敬しておりましたので、その影響を受け歯科医師を志しました。
本院の「前島歯科医院飯田橋デンタルケアオフィス」とは別に、新たに予防歯科とホワイトニング専門クリニックの「アジュテ前島デンタルクリニック」をオープンされましたが、その理由について、教えていただけますでしょうか。
昨今、世間一般的にも「人生100年時代」という言葉がかなり浸透してきましたが、私は10年程前から健康寿命の延伸を考え、予防歯科に力を入れてきました。本院だけでは治療と予防をエリア分けすることが難しいうえ、患者さんの意識を高める点においても、その難しさを感じておりました。やはり予防歯科に力を入れるからには本院の限られたユニット数では限界があり、新たに予防フロアを作りたいと考えていた矢先、運よく同フロアで当院をオープンすることができました。以前より患者さんからは「治療の音がする中での予防には抵抗がある」というお声を頂戴していましたので、その点においても良かったと思っています。
本院との連携はどのように図られているのでしょうか。
まずスタッフに関しては、予め当院をオープンする意味をしっかりと伝えておりましたので、特に問題はございませんでした。患者さんに関しては、まだ当院の存在意義が伝わりきれてない部分もありますが、日々少しずつ浸透してきているのを実感しております。
私は予防治療について、本来、健康な人こそ受けるべきものだという認識を強くもっています。病気には該当しないため保険治療の対象外となりますが、「健康だからこそ予防に通う」という、今までの患者さんにはなかった意識を積極的に植え付ける必要性を感じています。
妥協なき患者教育
貴院のコンセプトである「できるだけ歯を削らず」「生まれ持った歯を出来るだけ残して、歯の寿命を長くする」の言葉通り、からだに優しい歯を削らないドリルフリー治療が好評ですが、その特徴について教えてください。
ドリルを使うとどうしても熱刺激や、歯の神経に対する影響等があります。そのため、ドイツ製のアクアケアという歯に優しい特殊な機械を導入して、人体への侵襲が少ないMI治療を心掛けています。さらに人間が肉眼で認識することができないむし歯や、むし歯になりかけている歯を検知して、その小さな段階での治療や、あるいは再石灰化をさせて、むし歯にさせないというような治療にも力を入れています。
貴院に通院されている方は、歯への健康意識が高い方が多いと思われますが、継続的にメインテナンスに通っていただくために工夫されていることがございましたら、教えてください。
確かに健康意識の高い方が多いですが、当院が目標とする本当の意味を理解している方はまだ少ないと思っています。そのためメインテナンスの重要性を理解していただけるように、説明に力を入れています。初診時には多くの方が何らかの歯科的問題を抱えているわけですが、主訴を作った原因を理解せずに、治療後にただメインテナンスに移行するだけでは、いずれ再発する可能性が高くなります。「ただ定期メインテナンスに通う」のではなく、主訴の原因を取り除くことが大切です。やはり多くの時間を費やすセルフ管理が最も重要ですので、ホームケアについても丁寧に時間を掛けてお伝えしています。
オフィス街のため喫煙者も多いですが、喫煙は歯周病の進行を加速させるため、当院に一歩入ったからには、しっかりとご説明をして、禁煙のアプローチを行います。実際に当院の患者さんが肺がんで何人も亡くなっています。その方たちがどのような社会的制裁を受けて、どのような精神的なダメージを受けて後悔されていたか、その姿を目の当たりにしてきました。喫煙に潜む恐ろしさについて、今すぐにイメージすることは難しいかも知れませんが、私達が目にしてきた経験をもとに説明を行い、今いる患者さんの将来の健康を守っていきたいと思います。
多角的な視点で健康をサポート
美佳先生は新しいホワイトニング剤等の開発研究チームに所属されています。
貴院で提供されている新開発のホワイトニング剤の特徴やその効果等について、教えていただけますでしょうか。
ホワイトニング剤については、お台場に国立の研究所を持っており、日々実験と検証を繰り返し行い、私も何年もチームに参加しています。参加当初は接着剤の開発で携わりましたが、鹿児島大学の理工学部の方にご協力いただきました。大手メーカーではありませんが、患者さん第一のとにかく真面目で良い製品を作ろうと努力している企業です。
その企業は昔からホワイトニング剤についても研究しており、国内外における各メーカーの組成を調べて、それらの製品と同等のものを作れる力を持っています。例えば一般的な製品で効果はあるが、シミや痛みが出てしまうものも少なくありません。患者さん目線でそのような点を改善しておりますので、安心して施術を受けていただけるのではないかと思います。
ホワイトニングを行うとさらなる健康意識の向上が期待されますが、その後メインテンスへとスムーズに移行される方も多いのでしょうか。
そうですね。ホワイトニングを希望される方は、もともと口腔内への関心が高い傾向にありますので、メインテナンスに移行される方がとても多いです。逆のケースもありまして、メインテナンスからホワイトニングを希望される方も多く、とても良い相互作用が働いています。現在、ホワイトニングは当院の施術となり、本院と連携して行っています。
美佳先生はアジュテ開業以前に本院でも、食事・栄養指導・サプリメント療法など、口腔内だけでなく全身のトータル医療を提供されています。その効果や重要性、また歯科医院で提供することで得られる相乗効果等について、教えていただけますでしょうか。
アンチエイジング歯科学会にて色々な勉強をさせていただきました。臨床を通して歯周病治療の際、栄養状態が偏っている人、栄養状態が悪い人は、良い歯周病治療を行ったとしても治りが遅い・治りが悪いと感じていました。そして食事指導やサプリメントのアドバイスをし、栄養状態が整うとともに歯肉の状態も良くなり、歯周病の治癒スピードも上がりました。その事がお口にとどまらず、全身のトータル医療を提供するきっかけとなりました。口腔を通してトータルバランスを整える重要性に気が付いたのです。やはり10年後20年後、誰もが健康でありたいと思っていると思いますが「人生100年時代」、皆さまが健康で楽しく過ごせるように、そのお手伝いができればと切に思っています。
今後の展望・展開
貴院に通おうか悩まれている方へのご参考までに、どのような主訴で来院される方が多いのか、患者傾向について教えていただけますでしょうか。
いわゆるカリエス多発者や、ほとんどの歯がボロボロという方は非常に少ないですが、むし歯治療の方は一定数いらっしゃいます。全身の健康を守るメニューも取り揃えておりますので、その施術を希望されたり、ベーシックな定期検診を受ける患者さんも多いです。また、院長は歯を失った場合に歯を出来るだけ削らないでブリッジを入れる「ヒューマンブリッジ」の第一人者ですので、その治療を希望される患者さんも多いです。
予防歯科において歯科衛生士の役割は非常に大きいですが、採用・教育・マネジメント面で大切にされていることがございましたら、教えてください。
最も重要なポイントは理念が共有できることです。私自身もそうですが、歯科という仕事を通して自分たちの役割・使命というものをしっかり認識することが大切だと思います。当院の理念は「予防医療を通し人々を笑顔にし、健康で幸せな人生のサポートをする。輝く未来に貢献する」です。理念を共有し、一生懸命頑張ってくれている当院のスタッフにはいつも感謝しております。
最後に貴院の今後の展望・展開について教えていただけますでしょうか。
いま健康だからこそ、その健康を維持・守るために当院に通ってくださる患者さんを増やしていきたいと思っています。ただ患者さんはいきなり予防歯科だけにはならず必ず治療が必要な方もいらっしゃいますので、本院と当院で役割分担を行い「人生100年時代」の皆さまの健康に寄与できるように努めていきたいと思います。