むし歯予防のためのナイトルーティーン
むし歯を予防する秘訣として、特に就寝前の習慣が大きな鍵を握ります。なぜなら、睡眠中は唾液の分泌が減少し、細菌が活発に繁殖しやすくなるからです。では、どんなナイトルーティーンが効果的なのでしょうか? むし歯予防のために今日から実践できるポイントをお伝えします。
まず、就寝2時間前にむし歯の原因になるような食べ物や飲み物、つまり、甘いお菓子、スナック菓子、パン、クラッカー、ジュース、炭酸飲料、スポーツドリンクなどを摂らないようにしましょう。これらは「発酵性炭水化物」(糖類とでんぷん)と呼ばれ、むし歯菌の餌になります。むし歯菌の餌にならないものは就寝2時間以内に食べたり飲んだりしても大丈夫。例えば、チーズやナッツ類、ゆで卵、野菜スティック、お水やお茶など砂糖の入っていない飲み物です。
歯みがきは、必ずフッ化物が入った歯みがきペーストを使って、寝る直前にしてください。フッ化物は歯の再石灰化を促し、むし歯の発生を防ぐ強い味方です。7歳以上の人は、フッ素濃度が1,450ppmと書かれた歯みがきペーストを歯ブラシのヘッドいっぱいに乗せて(約2cm)使いましょう。
このフッ化物がなるべくお口の中に入った状態で寝るのがポイントです。まず、歯磨き中はお口の中の泡や唾液を捨てないように溜めておいてください。そして、2分間磨いた後、掌に乗るくらいの少量のお水(約10cc)をお口の中に入れて泡や唾液に混ぜて、勢いよく頬を動かして、歯と歯の間にフッ化物が入っていくようにブクブク嗽をしてください。20秒以上はかけてくださいね。それが終わったら、もうお口に何も入れてはいけません。
デンタルフロスや歯間ブラシを使う場合も、歯と歯の間に入り込んでいるはずのフッ化物を取り除かないために、歯みがきの後ではなく前にしましょう。歯ブラシだけでは、歯と歯の間に残った食べかすやバイオフィルム(プラーク、歯垢)を完全に取り除くことはできません。そのため、歯と歯の間にフィットしやすいデンタルフロスや歯間ブラシはとても大事なのですが、研究では、デンタルフロスや歯間ブラシ単体でのむし歯予防効果は明確ではありませんが、歯周病予防には有効です。夜の時間が取りやすい時に、これらを歯磨き前に活用するとよいでしょう。歯と歯と歯の間が広い方は、フロスよりも歯間ブラシの方が効果的です。
マウスウォッシュ(洗口液)で歯みがきを仕上げる人はいますか?これも以ての外なのです!せっかくのフッ化物を洗い流してしまいます。フッ化物が入ったマウスウオッシュならばまだいいのですが、日本で売られているものはフッ素の濃度が低いので、1,450ppmのフッ化物入り歯みがきペーストにプラスした効果は望めません。
しかし、夜遅く帰ってきて、もう歯みがきする体力も気力もないような時には、フッ化物入りマウスウオッシュが重宝します。歯みがきをしなくても、これでブクブクっと20秒以上勢いよく嗽をして寝ちゃってください。日常的な習慣にはしてほしくありませんが、やらないよりはマシという特別な場合の次善策として覚えておいてくださいね。
それでは、いい夢を!
画像説明
月の輝く夜。むし歯予防のためのナイトルーティーンをお忘れなく。
筆者プロフィール

Makiko NISHI
西 真紀子 NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長
(旧称 「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」)
1996年 | 大阪大学歯学部卒業 |
大阪大学歯学部歯科保存学講座入局 | |
2000年 | スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員 |
2001年 | 山形県酒田市 日吉歯科診療所勤務 |
2007年 | アイルランド国立コーク大学大学院修士課程修了 |
Master of Dental Public Health (MDPH)取得 | |
2010年 | NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長 |
(旧称 「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」) | |
2018年 | 同大学院博士課程修了 |
Doctor of Philosophy(PhD)取得 |
